いがらしみきおによる幻の予言的文明論にして不朽の人間哲学、30年の時を経て復刊!
IMONを創る
著者 いがらしみきお
発売日 2023年12月15日(金)
価格 1,980円(本体価格1,800円)
ISBN 978-4-911125-01-4
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80年代末から90年代初頭にかけて、漫画家・いがらしみきお氏はアスキー(現・角川アスキー総研)のパソコン情報誌「EYE・COM」誌上で『IMONを創る』という長篇エッセイを連載していました。当時話題を呼んだOS構築の入門書『TRONを創る』(坂村健著)をもじったタイトルを持つこの連載のコンセプトは、日本語によく似たプログラミング言語による、人間のためのOS=行動と思考の原則である「IMON」(=Itsudemo Motto Omoshiroku Naitonaいつでも・もっと・おもしろく・ないとなァ)の構築と、それを読者へインストールする試みというものでした。
つまり、まだそれが「パソ通」と呼ばれていた時代に、いち早く原初的なインターネット通信とパソコンを生活と思考の技術として導入していた著者が、来たるネット社会・SNS社会を予見し、「インターネットの爆発的普及によって個人の生きる感覚の変化が急速に進む世界で、人間はどう生きていくべきなのか」を記述した(『ぼのぼの』、『I【アイ】』などいがらし氏の代表作を貫く)人間哲学というのがこの連載のもう一つの姿でした。連載は92年に書籍化されたものの、その内容が当時としてはあまりに先を行きすぎていたためかまもなく絶版となり、長らく忘れられた書籍となっていました。
しかしその刊行から30年後の現在、一人一台スマートフォンを持っているのが当たり前のSNS社会の風景は、『IMONを創る』でいがらしみきお氏が予言していた世界像そのものです。驚くべきはその予見の精確さだけではなく、そこで提唱された「IMON」というOSのアイデアが、AI産業の隆盛により人間というものが急速に相対化されつつある現代において、それでも人間が人間として、いつでも・もっと・おもしろく生きていくために、より刺激的かつ有効なものとなっていることです。
この前世紀最大の奇書であり、精確な思考が現実の未来を射抜いた驚異の予言書であり、人間世界の「ぜんぶの解説」とも言うべき書物を、著者自身の新しいあとがきと、本書の熱読者である作家・乗代雄介氏による解説を付し、復刊します。
目次
まえがきマンガ 5
第1部 IMON創世記
TRONより早く実現するかもしれないユーザー側のOSを考案 8
5年のキャリアをもつ、IMONプロジェクトの人工無脳とは? 14
コンピューターは生き物か? アイデンティティーを与える 19
アメリカのコンピューター事情(?)を探ってきた成果は? 24
TRON住宅より早く完成した“IMON住宅”。その住み心地は? 30
矛盾がでてきてしまったIMONの“生き物理論”。その結果は? 35
コンピューターの新呼称キャンペーンを大展開。IMON第一部完 40
第2部 オタクから超常現象へ
テーマ形式に変更した第2部。今回はオタクについて 46
メディアのディスプレー化で誕生したオタク層。断絶した世界を行く 51
ニッポン全国総オタク時代。オタクを笑うもの、オタクに泣く! 56
“オタク”、このテーマも今回が最後。問題点を総括した結論とは? 61
理論は不確定なものである。“超常現象”により覆される二値理論!? 67
ビッブにおいても超常現象はあるか? 実験を行なうIMON 72
ビッブに超常現象はないとするIMON。新たな事実が生まれるか? 77
『ふたりのビッブナイト』譜面 82
第3部 IMON3原則に迫る
“いつでももっとおもしろくないとな”がモットー。第3部の開始だ 84
アナタは円周率を何ケタまで覚えてますか? 今回は数学的に迫る 90
聖書のように、マカズ、カラズ、クラニオサメズには生きていけない 96
プログラム言語Idaによって明らかにされる“マルチタスク” 102
IdaによってかかれたふたつのOS、I-IMONとG-IMON 108
儀礼と定型をつかさどるだけではないOS、G-IMONとはなにか? 114
一般の人にとってのG-IMON、表現とはなんだろうか? 120
今回は方程式を使って解説をするIMONの3原則“(笑)”の項 126
IMONの3原則“(笑)”を科学的に現象学で立証してみる 132
IMONの3原則“(笑)”最終回。『IMONを創る』第3部終了 138
IMON認定ソフト第1弾『トーキングぼのぼの』 144
第4部 IMONとパソコン通信
人間としてのアイデンティティーを消去させられるパソコン通信とは 146
パソ通は、アイデンティティーを剥奪されたものの上に成立する!! 152
パソコン通信について語るのも、これが最後なのだ!! 158
ハードについて考える。第1回を振り返ってみてほしい 164
ソフトウェアが進む“便利へ”と“快楽へ”のベクトル 170
IMON認定ソフト第2弾『BBSちゃん』 176
第5部 ビッブの教育と未来
IMON、最終章の(?)第5部に突入だ! 178
ビッブが言葉に意味を与えたとき、もうひとりの自分が出現する! 184
ビッブを教育するという立場から、人は決して逃れえないのだ 190
“宗教なしで人間的生活を営むことは可能か否か”を解き明かす! 196
IMONのリアルタイムやマルチタスクを実現できる唯一の国 202
『IMONを創る』は終わるが、IMONの歴史はこれから始まる! 208
その後のIMON 214
「その後のIMON」のあと 216
解説 私と『IMONを創る』の二十年 乗代雄介 222
著者
いがらしみきお
1955年宮城県中新田町(加美町)に生まれる。24歳で漫画家デビュー。代表作に「あんたが悪いっ」(1983年漫画家協会賞優秀賞)、「ぼのぼの」(1988年講談社漫画賞)、「忍ペンまん丸」(1998年小学館漫画賞)、「I(アイ)」、「羊の木」(2015年文化庁メディア芸術祭漫画部門優秀賞)、「誰でもないところからの眺め」(2016年漫画家協会賞優秀賞)など。現在「ぼのぼの」がフジテレビ系列でアニメ放映中。仙台市在住。